揺れる長崎の被爆者 がれき広域処理 5団体が反対

東京新聞4月5日の夕刊です。

そのまま掲載します。

 

 

長崎市の被爆者五団体が、東日本大震災で生じたがれきの広域処理に反対を表明した。ただ、一部には被災地との連帯を模索する動きも出たほか、田上富久市長は受け入れに前向き。「連帯を」「被害が出てからでは遅い」。原爆投下から六十七年目の被爆地は、さまざまな意見に揺れている。

   ▽異論

 「原発事故後、どうして良いか分からず苦しんでいる被災者に被爆者が連帯できないか」

 三月三十日の長崎原爆被災者協議会(被災協)の理事会。「放射線被害の拡大を招く」として、がれき広域処理に反対の声が多数上がる中で、広瀬方人理事が口を開いた。

 長崎で核兵器廃絶を訴えてきた被爆者五団体のうち四団体が反対を打ち出す中、被災協だけは「被災地に寄り添うべきだ」とする内部の意見が出たため、態度を保留。五団体の足並みが乱れる異例の事態となっていた。

 今も放射線被害に苦しむ被爆者。爆風や熱線を免れても、倒壊した建物や土壌などの残留放射線を浴びて被ばくした人も多く、身をもって恐ろしさを知っている。

 一方で長崎には「長崎は助けられ、復興した歴史がある」(田上市長)として、前向きな意見が多いことも確か。田上市長は、安全性の確保や市民の理解を前提に、基本的には協力する姿勢だ。

 被災協理事会でも「東北のお手伝いができないか」などの意見が続出。議論の末、被災地との連帯を呼び掛ける声明を出すことで、最終的に「反対」でまとまった。

   ▽課題

 市議会は一日、市に受け入れを求める決議案を可決した。反対した井原東洋一市議は「放射線被害が出てからでは遅い。市長はどう市民の理解を得るか重い課題を背負った」と話す。井原市議は、反対を表明した五団体の一つ、長崎県被爆者手帳友の会の会長も務める。

 長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議長は三月の記者会見で「絆や連帯の気持ちは分かるが、被ばくの問題は厳しく捉えるべきで、被災地にも理解されるはずだ」と強調した。

 広島県の二つの被爆者団体も、放射線の影響を懸念。受け入れ反対を決めた広島県原爆被害者団体協議会(金子一士理事長)の大越和郎事務局長は「政府から安全性や処理方法の説明が何もない」と不安げだ。

 安斎育郎立命館大名誉教授(放射線防護学)は「被爆者団体の考え方は理にかなっており、納得できる。受け入れる場合も善意と科学は区別すべきで、市長は市民が選んだ専門家を招くなど民主的な手続きに徹するべきだ」と提言している。

nanohana ナノハナ | 地球と7代先のこどもたちを元気にしてゆく情報発信サイト